会社設立
インドでビジネスをするために会社を作る場合、いきなり会社の設立申請をすることはできません。
インドでの手続きは煩雑で時間がかかりますが、まずは全体の流れを把握し、順番を間違えずにひとつずつ進めていくのが最善の方法です。
会社設立を行う場合、会計会社やコンサル会社に頼むのが一般的です。というよりも、それらに頼まないで自力で会社設立をした日本人を私は知りません。
ということで、会計会社に依頼をするわけですが、外国企業との取引も多い大手会計会社などを除いて、彼らは全体の流れを上手く説明できないんですね。多分、私が住んでいるデリーの一般企業では全体を把握して図や文章などで体系立てて他人に説明する習慣が少ないからだと思います。
正式にビジネスを始めるためには大きく分けて以下の3つのフェーズを終えないといけません。
(1)ダイレクター(取締役)を立てる。
*会社はダイレクターによって作られるため。
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(2)会社を作る。
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(3)ビジネスに必要なものの取得。
会社の設立申請をするためにまずはその会社のダイレクター(Director)を選出する必要があります。
一般的なプライベートリミテッドカンパニーであれば、ダイレクターは最低2名必要です。
もちろん、日本人もダイレクターになることができます。ただし、インドに在住していない(具体的にはインドの納税番号であるPANを持っていない)人間がダイレクターになるためには、身分証明として日本で戸籍抄本などを取得し、翻訳して日本の公証人役場で公文書化し、場合によってはインド大使館で証明を受ける必要があります。
こういった話しを聞くと面倒くさいと思い、インドで知り合ったインド人にダイレクターを任せてしまうパターンがありますが、ダイレクターとは経営権を持っていますので、後々もっと面倒なことになるのがほとんどです。
ダイレクター登録の手続きをすると、DINとDSCというものが発行されます。簡単に言うとダイレクター番号とダイレクターの電子証明書です。インドは電子申請が発達しており、オンラインで会社の様々な申請を行う際にダイレクター本人かどうかを認証するために電子証明書のDSCを使います。
会社設立までは以下の流れになります。
(1)会社の名前(商号)の利用認可をもらう。
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(2)MOA(基本定款)とAOA(付属定款)を作成
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(3)登記申請
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(4)COI(登記証明書)の発行
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(5)PAN/TANの発行
*基本PANは銀行座開設に必要ですが、PAN取得に時間がかかるため口座開設後になる場合もあります。
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(6)銀行口座開設 *会社の口座です
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(7)銀行口座へ資本金を入金
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*ここからは日本から資本金を入れる(外資の)場合
(8)RBI(インド準備銀行)に資本金の入金について報告
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(9)RBIより登録番号の発行
COIが発行されれば、会社で雇用することができ、日本でEmploymentビザ(就労ビザ)を取ることができます。
多くのコンサル会社などのWEBサイトでは会社設立の説明は前述までの内容で終わることが多いです。ですが、実際にビジネスをするには更に様々な番号を取得する必要があります。法人設立は費用を抑えて安く見せ、追加で必要な番号を取得する費用を高めに取る会社もありますので、会社設立を依頼する場合は後述する中で必要なものも合わせて最初に総額を確認するようにしましょう。
(1)TIN(Tax-Payer Identification Number)
州内で販売した場合のVAT(付加価値税≒物販税)、州を超える販売の場合のCST(中央売上税≒越州税)を納税するために必要となります。TINを取得する際にはコマーシャルエリアと呼ばれる商業エリアの住所を販売場所として登録する必要があります。TINの申請をすると政府の担当者が販売場所に問題がないかを確認に来ます。なお、販売は実際に形があるもの(ハード)だけでなくソフトウェアやデータなども対象となりますのでご注意ください。
(2)Service Tax Number
サービスを提供するビジネスの場合は、この納税番号が必要となります。サービスとは何かというと、基本的に(1)以外の販売をしないビジネスのことです。レンタルビジネスもサービスになります。
(3)Import/Export Number
インド国外との輸出入のビジネスをする場合は、この輸出入番号が必要となります。
なお、それぞれ番号はカテゴリー毎に登録する必要があり、全てのカテゴリーを取得することはできません(サービス税番号であれば4カテゴリー程度まで)。多くのカテゴリーのビジネスをしたい場合は、業種毎に複数の会社を作る必要があります。
また、レストランなどのように食事の販売に加え、サービス(食べる場所)の提供も行う場合は、(1)と(2)の両方が必要となり、VATとサービス税の両方を納税します。
さあ、これでやっと本格的なビジネスを始めることができます。